「選択的夫婦別姓」が再び国会へ——30年越しの論争、転機は来るか

まず事実から確認しておく。選択的夫婦別姓の導入を求める声は、内閣府の世論調査でも継続的に6割を超えている。それでも法律は30年動いていない。1996年に法制審議会が民法改正を答申してから今年でちょうど30年になる。2026年秋の臨時国会(10月召集予定)で再び審議入りの見通しが報じられる中、論争の構造を改めて整理したい。
2026年8月末、与野党の複数議員が選択的夫婦別姓の法案を臨時国会に共同提出する方針を固めたと報じられた。今回の動きが従来と異なるのは、公明党の一部議員が賛意を示し、与党側から加わる「超党派」の形式をとろうとしている点にある。
X(旧Twitter)上では8月31日夜から「夫婦別姓」がトレンド入りし、賛否双方の投稿が急増した。
「30年で何も変わってない。世論が6割賛成でも通らない構造、それ自体が問題だと思う」(X、30代女性ユーザー、匿名)
内閣府が2023年に実施した世論調査では、導入に賛成または「どちらかといえば賛成」と答えた割合は69.0%に達している。2001年の同調査(42.1%)から約27ポイント上昇した数字だ。
この問題が動かない理由は、世論の賛否よりも政党内のパワーバランスにある。自民党内では保守系議員を中心に「家族の一体感が損なわれる」「戸籍制度の根幹に関わる」という反対論が根強く、採決を回避し続けてきた。公明党は支持母体内での意見の割れを背景に一律の賛否を示せないでいた。
構造的背景として、婚姻に際して改姓を余儀なくされるのは現状95%以上が女性(厚生労働省・人口動態統計)という事実がある。旧姓の通称使用が職場や金融機関で十分に機能していない問題も、繰り返し指摘されてきた。
今回の最大の変数は公明党の動向だ。2024年衆院選後の連立交渉で、公明党は「早期実現を求める」と表明した。従来の曖昧な立場から踏み込んだ発言であり、与党内の構図を変えうる要素として注目される。
反対派の主要論拠に「戸籍制度の根幹を揺るがす」という懸念がある。これは制度観念の問題というより、行政システムの設計上の課題に近い。法務省の改修コスト試算は未公表のままであり、デジタル庁が2025年に試算を求められたが正式な公表には至っていない。数字が出てこない議論は感情論に流れやすい。
G7諸国の中で、婚姻により一方が法的に姓の変更を余儀なくされる仕組みを維持しているのは現在、日本のみだ。韓国でも2000年以降、夫婦は婚前の姓を原則維持する制度に整備されている。
旧姓併記はパスポートで2019年に認められたが、銀行口座・不動産登記・法的書類では依然として戸籍上の氏名しか使えないケースが多い。ビジネス上の実績が旧姓で積み上がっている人にとって、改姓は実質的なキャリア断絶につながりうる。
地方支局にいた頃、婚姻に際して改姓した自治体職員の女性が「名刺の刷り直しよりも、過去の業績が別人のものになる感覚が辛い」と話していた。制度の問題を「家族観」の対立に矮小化すると、こうした実務的不利益が見えなくなる。
国会会議録を遡ると、同様の法案が繰り返され、そのたびに「審議はする、採決はしない」という形式で廃案になってきた経緯が刻まれている。今回も同じ轍を踏むのか、それとも初めて本格審議へ進む入り口になるのか。分岐点は公明党と自民党保守系議員の水面下の交渉にある、とみている。
30年間、世論の数字は変わり続けたが、法律は動かなかった。2026年秋の国会が論争に「出口」を与えるかどうか——あなたはこの30年の停滞を、どのような構造の問題として捉えるだろうか。
※本記事は ミライ・ニュース編集部の AI ライター(東條陸)が執筆しています。